おとなの読書感想文

恋愛小説から自己啓発まで。26歳OLの読書感想文。

「仕事ができる人」の思考プロセス-『イシューからはじめよ』安宅和人

仕事ができる人と、そうでない人の違いは、なんでしょうか。

 

職場というコミュニティにおいて、「仕事ができる人」と、「そうでない人」のあいだに漠然と引かれてしまうライン。

見えないラインはまるで靴底にへばりつくガムのように、いつまでもくっついたまま、日に日に組織全体の足取りを重くしてしまうものだと感じます。

 

本書は、いわゆる「仕事ができる」→「生産性の高い仕事ができる」→「少ない労力・短い時間で価値のある成果を出すことができる」と具体化し、そこにいたるまでの近道を提示する1冊となっています。

 

「仕事ができる人」になるための近道。

 

それは、「どんな成果、どんな答えを出すことがいま組織にとって必要か」ということについて、はじめによく検討すること。

著者は、この組織にとって必要な答え、およびその答えにいたる課題を「イシュー」と呼び、イシューの見極めこそが重要であると主張します。

 

どんなに残業をして膨大な資料を作成したとしても、そもそもその内容が組織にとってあまり価値のあるものでなければ、「仕事ができる」とは評価されません。

本来ビジネスパーソンとは、労働時間ではなくアウトプットベースで評価されるべき存在であり、より本質的なイシューに取り組むことこそが「価値ある成果」を出すために重要だということです。

 

これは一見当然のことのように聞こえますが、日々多方面からの課題に直面するビジネスの現場において、「いまこの局面で、この問題に答えを出す必要性がどれくらいあるだろうか」と一歩ひいて考えることは、思いのほか難しいのではないかと思います。

私たちの仕事は往々にして、「この商品の収益向上のためにはどうすればいいだろうか」「新しい会計基準について調べる」など、作業を進めていくうちにトンネルの向こうにある答えに辿りつくものであり、

いまから取り組もうとしている仕事そのものが価値あるものかを検討することは、いわばまだ見ぬトンネルの出口に先回りするようなものだからです。

 

そこで、目の前の課題のイシュー度を高めるために重要なことの一つとして、「仮説を立てる」ことが挙げられています。

「○○の市場規模はどうなっているのか?」というのは単なる「設問」に過ぎない。

ここで、「○○の市場規模は縮小に入りつつあるのではないか?」と仮説を取ることで、答えを出し得るイシューになる。

イシューは仮説を立てることで具体化され、より鋭く組織の現状にささりこみ、

自らが課題に対して何らかのスタンスを取ることで、そこから導き出される解の質が上がっていく、というわけです。

そのため、たとえ分析や調査の結果がその仮説に反するものであったとしても、意義のあるイシュー設定ができていれば、導かれる解はおのずと価値のあるものになっているはずであり、

一方で仮説がないまま課題に当たろうとするならば、それはやはり闇雲に出口のみえないトンネルを突き進む行為になってしまうのです。

 

 

企業とは、巨大なジャングルのようだと感じることがあります。

さまざまなバックグラウンドを持つ者が集まり、その人柄や考え方も多様です。

先人たちの足跡がいつのまにかルールや価値観を形成し、新しい命は生きるすべとしてそれらを受け継いでいきます。

 

もしかすると、いま置かれている職場環境において「イシューからはじめる」ことは、簡単ではないかもしれません。

上司に指示された仕事について、「これはいますぐ検討することが本当に必要でしょうか」と聞くことは容易ではないし、

あまり本質的に思えないようなことでも、現実問題として処理しなければならないタスクというのはこの巨大ジャングルの中に絶えず存在しているからです。

 

しかしながら、そういった状況においても本書の内容はやはり有益だと思うのです。

本書では、「イシューからはじめよ」という上記の考え方を土台に、「良いイシュー」の検証、仮説の立て方、分析の仕方、プレゼンの組み立て方など、一つの案件をより高いレベルで完成させるための近道を具体的に提示しているのですが、

どんな課題やタスクにもそれらを意識してあたることで、「仕事ができる人」の思考プロセスを習慣づける訓練になると考えています。

 

職場というコミュニティにおいて、「仕事ができる人」と、「そうでない人」のあいだに漠然と引かれてしまうライン。

 

本書を読み進めていくと、そのラインの輪郭は次第に具体化されて浮かび上がり、仕事の組み立て方や、物事のはこび方の違いによるものであることが、わかってくるはずです。