おとなの読書感想文

恋愛小説から自己啓発まで。26歳OLの読書感想文。

幸せになるためにたいせつな4つのこと- 『四つ話のクローバー』水野敬也

 

東京でリストラに遭い、田舎に帰ってきたものの、行き場をなくした主人公。

こんな小さな田舎町で自殺なんてしたら、家族は外を歩くたび後ろ指を指されることになる。戻ってきたばかりのころは心療内科に通っていたけれど、すぐに行くのを辞めてしまった……。

そんな主人公が、偶然お金持ちの幼馴染と再会するところから物語ははじまります。

それは幼馴染の祖父がつくった、4つの物語。

 

1. 深沢会長の秘密

「『人間は何かを我慢することはできない』。私たち生物は、嫌なことからは逃げて、気持ち良いことに向かうようにプログラミングされている。私たちは、『したいことしかできない』のだ」

これは、筆者である水野氏が、自身のさまざまな著書の中でも繰り返し主張していることです。そして同時に、成功には痛みを伴うということも主張している。

成功するために努力は欠かせないけれど、我慢をして苦しいことをするのは人間の本能に背いていて、そのために多くのひとは努力を続けることができない、というわけです。

それはまるで絶望的なジレンマのようで、思わずこう聞きたくなってしまうのです。「だったらどうすればいいの?」と。

 

過去の偉人たちも実践してきた、そのジレンマを乗り越える方法を、ユーモアたっぷりに教えてくれる物語です。

 

2. ハッピーコロシアム 

スクランブル交差点で何人ものひとが振り返るような美人にも、実は鏡をみてため息をついてしまうようなコンプレックスがあって、整形手術をするためにお金を貯めていたりする。

友人からそんな話をきくたびに、ひとは決して満足しない生き物なのだろうかと、すこし絶望してしまうことがあります。

 

この物語は、大金持ちの実業家と、質素な名もなき男性が、「幸福度指数」を競うストーリー。

飽くなき欲望に突き動かされる実業家、そしてたった1本のししゃもにも心からの感謝と満足を得る男性。勝負のゆくえは、予想もしない方向に進んでいきます。

 

「 幸せ」の定義に正解がないことは、みんな薄々気づいているのです。そんなことはわかっていながら、私たちの多くは、その答えをずっと模索したままです。

そんな私たちよりも先に、それぞれの「幸せ」の定義にたどり着いた2人の戦いの物語。

 

3. 見えない学校

「『電車に乗る人には見えてないけど、みんなのことを考えてる人には見える景色』ってなーんだ?」

私はベッドで本を読みながら、この章にでてくる問題の答えを考えていました。

毎朝乗る電車のホームを想像し、普段見落としている景色はないだろうかと、目を閉じ集中して考えていました。

 

けれどこの物語を最後まで読めば、私がどれだけ必死に考えたところで答えにたどり着くことはできないのだ、と、気づくのです。

 

この物語のテーマは、「共感と行動」です。

どれだけ相手の立場や感情に共感することができるか、そして、行動に移すことができるか。仕事や人間関係で悩んだときこそ、「共感と行動」が大切であると、語られています。

ベッドでいくら考えても、それは行動を欠いているから、いつまでたっても答えにたどり着くことができない。この問題の答えを知ったとき、そのことに気づかされるはずです。

 

4. 氷の親子

「さあ、お行きなさい。命が終わるその瞬間まで、全力で生きなさい。」

私たちの人生は、有限であるということ。

いつか親孝行をしようとか、いつか成功して充実した毎日を送りたいとか、

漠然と将来を想像しているあいだにも、それらを実現するために残された時間は、刻々と削られているということ。

忘れてしまいがちだけれど、どんな生き方をしていたって、時間は平等に過ぎていくのです。

 

嫌な上司や、退屈な仕事。自分を取り巻く環境が、人生に暗い影を落とすこともある。

それでも、生きるということが本当はどれほど魅力的なことなのか、ある親子の物語をとおして、学ぶことができます。

刻一刻と命が削られているとしたら。いつかやりたいと思っていたことをいくつも抱えたまま、タイムリミットを迎えてしまったら。

生き方を見つめ直すきっかけを与えてくれる物語です。

 

----------

 

4つの物語を聞いた主人公が、その後どんなふうになっていくのか。この本にはいっさい描かれていません。

それはまるで「この本を読んだひとりひとりが、一番その答えを知っているはずだ」という筆者からのメッセージのようにも思えてなりません。