おとなの読書感想文

恋愛小説から自己啓発まで。26歳OLの読書感想文。

「シンプルであること」はなぜ美しいのかー 『フランス人は10着しか服を持たない』ジェニファー・L・スコット

朝、目が覚めて、ああきょうも雨だなとわかる。

トーストを流し込んだまま駅に向かい、濡れた傘が人にあたらないようにして満員電車に乗りこむ。

誰かの傘からしたたる水が、私の足の甲を濡らす。

 

メトロの窓に自分が映り、もう誰にも会わずにこのまま家に帰りたくなる。

髪はよれよれで、朝急いで選んだ服は、まったく本意ではなかった……。

 

私がこの本を手に取ったのは、そんな日々が続く6月のある日のことでした。

憂鬱な雨と湿気がまとわりつく街で、シックで凛とした女性がもし颯爽と通ったら。

私は両脇に傘と大きな鞄を抱えながら走って呼び止め、「いったいどうしたらそんなに素敵な女性になれるんですか?」と、ぜいぜい息を切らしながら質問したかもしれません。

 

そしてまさにその問いかけは、筆者であるカリフォルニアガールのジェニファーが、ホームステイ先のミステリアスでシックなマダム、通称「マダム・シック」に対して抱いていたものでした。

そしてジェニファーは、マダム・シックの生活、あるいはアメリカ人とフランス人の考え方の違いなどについて鋭い観察をとおし、その疑問に対する答えを私たちに教えてくれるのです。

 

10着のワードローブを選ぶことで見えてくること。

自分のスタイルを知り、定番のファッションを持つこと。

自分らしくない、気分を下げてしまう服は思い切って捨ててしまうこと。

そうすると、いつ、誰に会っても自信を持っていられるようになる。

 

この本は、どしゃぶりの雨の日にだって素敵な女性でいられる秘訣で、溢れています。

 

 

余計なものや質の良くないもの、自分に合っていないと感じるものが身の周りにあったとしても、

いつか何かのときに使えるかもしれないし、取っておいても損はしない、と思っていました。

けれど私たちはきっと、そういったものを所有していることで、少しずつ損なわれているのです。

 

私たちが持っているグラスは、その大きさに限りがあります。

余計なものを入れたままにしておくことで、そのぶん自分が魅力的だと思う、うっとりできるものたちが、損なわれてしまっている。自分でも気づかないうちに。

 

私たちが「シンプルであること」に美しさを感じるのは、グラスの持ち主によって選ばれたものたちが、何一つ欠けていない状態で存在しているからではないでしょうか。

私たちはそんなグラスを前に、有無を言わせぬ自信や、強さ、美しさを感じ取ってしまうのです。

 

自分のクローゼットを見返して、溢れ返る洋服を1着ずつ吟味してみる。

この本を読み終えたすべての女性が、そうやって少しずつ自分らしさを取り戻す作業に取り掛かるのではないでしょうか。